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活動の経緯

SLLカルミア代表の堀井理絵です。息子(中学3年生)はPDD(広汎性発達障害)アスペルガー症候群で知的障害はありません。娘(小学4年生)は自閉症と言語発達遅滞・重度知的障害を持っています。

正直言って、私も4年前に東京都の支援学校及び支援学級での性教育が行われていない事を初めて知り、大変驚きました。

当時、支援学級に通っていた息子が、5年生の年度末に持ち帰った教科書の中に性教育の教科書がありました。
その教科書を指し、息子が「これ学校では使ってないんだけど、ボクが見ちゃいけない本なんだよね」と言うのです。

使っていない教科書?見てはいけない教科書?そんなものがあって良いのでしょうか?

担任の先生に聞いてみると
「東京都の支援学級や支援学校では性教育は行っていないんです」
「教科書は配られますが授業で使う事はありません」
という答えが返ってきました。

では何故配布されているのか、疑問は尽きません。

息子の中では「性」=「イケナイ事」という認識が未だに抜けていません。
性的衝動を起こすのは人間にとって当たり前の事で、それをコントロールする事が大切なのに、息子の中では「イケナイ事」つまり、触れてはいけない事になってしまったのです。
これは見逃せない事実です。

私はそれ以来、約4年間、支援学校や学級での性教育の再開に関する運動を起こしている団体はないのかと、時折調べていました。
同じように考える方はいらっしゃるようで、保護者向けに勉強会を開いている団体はいくつもありました。ですが、学校での正しい性教育を取り戻そうという運動をしている団体はありませんでした。

それでも、自分で団体を起こそうとは考えておらず、そんな団体があったら協力させて貰いたい、くらいに考えていました。

ある日ツイッターで「東京都の支援学校・学級での性教育が行われていない件」について「是非性教育を行って欲しい」とつぶやくと、1日で1300もリツイートされました。
「こんなにも大勢、共感してくれた人がいる」と思ったら居ても経ってもおられず、ネット署名を始めました。
この活動を始めたのが、ツイートをしたその日、2017年1月31日の事でした。
2月6日には、1週間経たずして、500を越える署名が集まりました。

私自身、PTAの委員会活動などで学校へ行く機会が増え、デイサービスへ行く機会、お話を聞く機会が増えました。
そんな中、何度か中学部の男子生徒に抱きつかれる事があったり、娘もデイサービスで中学部の男子生徒に抱きつかれる事が多々あったようです。
それも一人ではなく、複数人からです。
これは、支援学校やデイサービスという特殊な場面で、周りがお互いの特性を理解した上で、職員が目を光らせてくれているから特に問題にはなっていませんし、私自身問題だと声をあげることはしませんでした。

けれど、これが普通の学校、普通の場面で起こったら「性被害」ですよね?
健常児の親御さんが、娘と同じくらいの年の娘さんに、同様に中学生の男の子に抱きつかれたりしたら、それはもう「性被害」とされる事案です。
健常児を持つ親御さんにも話を聞きましたが「そんな事が起こったら許さない」と言っていました。
障害があれば許されるのでしょうか?

学校は「止める」以外の「教育」をしているのでしょうか?
もし、この行為を親御さんが知らないのであれば、それは報告義務を怠っているのではないでしょうか?
そして、それについての教育がなされていないのであれば、教育庁の学習要領から外れています。
個別指導という名のもとで、ずさんな対応を行っているのではないでしょうか?
個別ですから、集団で行うそれより可視化が難しいです。
ちゃんとした性教育が行われていないのであれば、それはもう「抱きつき」をしてしまう子自身も被害者です。
保護者がそれを知る事も大変難しいでしょう。
どこまでこの子は教育をされているのか、日常生活では分からない部分も多々あります。

保健室では、性教育(生理について)は高学年になってお泊り会の前に行うと伺いました。
それも何度も行うわけではないのでしょう。
しかし、知的障害で重度の子になればなる程、その教育は「繰り返し」「根気強く」「分かりやすく」教える事に意味があると思います。

身体のこと・性差などの教育は、小学校にあがったらすぐに始めても早すぎないくらいだという事です。

自分の身体はどんな風になっているのか、これが腕、これが頭、他人の身体はどうなっているのか、異性はどう違うのか。
自分の身体は自分のものだから触っても良いけれど、水着を着て隠れる部分は人に見せても触っても、触られてもイケナイ。
触られた場合、どういう対処をするのか、という事くらいは教えられるのではないでしょうか?

例えば「あたま・かた・ひざ・ぽん」のような遊びを通じて、日頃の運動や歌に取り入れる学びなど、全体での活動に取り入れる事は可能だと思います。

2003年の七生養護学校での事件では「当時先進的な性教育を行う学校側が勝訴した」にも関わらず、東京都の特別支援学校及び学級での性教育は無くなってしまいました。
一時は全国的に無くなってしまった性教育も、他県では運動が起こり徐々に取り入れられ始めています。
しかし東京都では、相変わらず性教育の授業は行われないままで、性教育は家庭で行うというスタンスになってしまいました。

東京都の「性教育の手引~盲・ろう・養護学校編~(平成17年3月)」には

学校における性教育は人格の完成を目指す人間教育の一環であり、学習指導要領や児童・生徒の発達段階に即して系統的・段階的に進めることが重要です。

と記載され、平成14年度以降性教育の指示をしているとも書かれています。

個別にだったら…と生理の準備などの指導はして下さる先生もいますが、性教育というのはそれだけではありません。
心と体と生きる事そのものが何なのか、自分や他人を大事にする事も性(生)教育です。
思春期を迎えると、本人もきっと自分の体や心の変化に戸惑う事でしょう。
それを「イケナイ」事と否定せず「自然」な事と捉えた上で、正しい性教育を行う事が重要です。

又、清潔に保つ事やルール、病気について、望まない妊娠についてなど、教える事は多岐にわたります。
性教育というのは何も性交や性器について教えるだけではありません。
伝える事は困難でも、知的障害児にも性や生について、命について知り、それを知る事で自分や他人を思いやる心を育てる大事な授業です。
そして、それを知る事は基本的人権でもあります。

学校は日々の自立支援に追われ、私もそれを目にし、ほんとうに大変だと思います。
ですが、性教育も「社会に出て、自立していく子供達」にとって重要な支援と考え、小学部から段階を踏み、マニュアルに囚われない、分かり易い性教育の実施を求めます。

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